なぜ「郵便局」でオンライン診療?背景にある課題と国の方針
日本の医療制度は、高度に発展した都市部と、人口減少や高齢化が進む地方・へき地との間で、医療アクセスの格差が年々拡大しています。とくに地方では、慢性的な医師不足や診療所の廃止が相次ぎ、通院すら困難な地域が増加。高齢者が片道数時間かけて病院に通うといったケースも現実に存在しています。そうした中、**「郵便局を活用したオンライン診療」**という新たな医療支援モデルが注目されています。
◆ なぜ“郵便局”なのか?地域に根付いた全国ネットワーク
そもそも、郵便局は日本全国どこにでも存在する、いわば最後の公共インフラとも言える存在です。総務省によると、営業中の郵便局は全国に約2万4,000局(令和6年時点)。その多くは都市部だけでなく山間部・離島にも存在し、地域住民の生活基盤を支える重要な施設です。
この郵便局のネットワークを活用し、「診療所がなくても、患者が最寄りの郵便局でオンライン診療を受けられる環境をつくる」ことで、医師不足や交通弱者への支援につなげようというのが、政府・自治体・郵便事業者の共通の狙いです。
◆ 国の取り組みと制度的な後押し
この動きは一部の自治体のアイデアではなく、厚生労働省と総務省が連携して進めている政策に基づいています。
たとえば2023年5月、厚生労働省は「医師が常駐しない診療所」をへき地などに限って設置できるという特例措置を通知(※1)。これにより、病院のない地域でも、郵便局や公民館を活用して「遠隔からの診療」が可能になりました。
さらに2024年1月には、その対象地域をへき地に限らず拡大する方向が示され、オンライン診療の拠点がより柔軟に設けられるようになっています(※2)。これは医療法の解釈と運用に基づく大きな制度改正であり、今後の地方医療のあり方を左右するターニングポイントといえるでしょう。
👉【外部リンク】
※1 厚生労働省「オンライン診療のための診療所開設に関する特例措置」(令和5年)
※2 医師非常駐のオンライン診療所の設置に関する通知(令和6年1月)
◆ 総務省の「公的地域基盤連携事業」としての位置づけ
総務省では、郵便局ネットワークを地域医療・デジタルサービスと結びつける取り組みを「公的地域基盤連携推進事業」として2022年より開始。2023年11月には石川県七尾市の南大呑郵便局で、**全国初の「診療ブース設置型オンライン診療」**の実証事業を実施しました。
この実証事業では、患者が郵便局に出向き、設置されたタブレット端末を通じて遠隔地の医師とビデオ通話で診療を受ける形が採られました。現場では、郵便局員が操作サポートを行うため、高齢者やデジタル機器が苦手な方でも安心して利用できる体制が整えられていました。
こうした実証結果を受けて、2024年7月からは山口県周南市・高瀬郵便局にて本格運用がスタート予定です。今後は全国の自治体でも同様の仕組みが展開される可能性があります。
◆ オンライン診療の課題と“補完的役割”の強調
一方で、郵便局でのオンライン診療が万能な解決策ではないことも認識する必要があります。たとえば、以下のような課題が依然として指摘されています。
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医師の負担増加(遠隔対応の多重業務)
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通信回線・プライバシー管理の確保
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処方箋の発行後の薬剤配送体制の整備
日本医師会も、「オンライン診療はあくまで対面診療の補完として活用すべき」との立場を表明しており、医師と患者の信頼関係を損なわない診療体制の構築が不可欠です(※3)。
👉【外部リンク】
※3 日本医師会「オンライン診療に関する情報共有会・発言要旨」
実証事業の内容とは?石川県・山口県の先進事例を紹介
オンライン診療の新たな展開として、「郵便局を拠点とした診療モデル」が全国の注目を集めています。都市部ではなく、医療資源が限られる「へき地」において、郵便局を活用するオンライン診療の実証事業が相次いで行われており、今後の地域医療のあり方を左右する重要な動きとなっています。
ここでは、具体的な事例として先行実施された石川県七尾市と、2024年7月に本格運用を予定している山口県周南市の事例を紹介します。
◆ 石川県七尾市:全国初のモデルケースとしての挑戦
▽ 実証期間と場所
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期間:2023年11月15日〜2024年2月16日
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場所:南大呑郵便局(石川県七尾市)
このプロジェクトは、総務省が推進する「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」の一環として、全国で初めて郵便局内に「オンライン診療ブース」を設置する形で行われました。診療所の少ない医療圏で、郵便局が住民の医療アクセス拠点になるという構想を実地で試すものです。
▽ 対象地域の医療状況
七尾市が含まれる能登中部医療圏は、診療所数が石川県内で最も少ない地域であり、通院可能な医療機関が物理的に限られていました。外来医師偏在指標や訪問診療の件数も全国平均を下回っており、高齢者を中心に医療アクセスの制約が深刻です。
▽ 実証の中で明らかになったこと
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郵便局ブースの利用により、通院困難者でも医師とつながることができた
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郵便局員がタブレット端末の操作を補助したことで、高齢者でも安心して利用可能だった
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診療後の処方箋はオンラインで薬局へ送られ、自宅配送も含めた仕組みが試行された
加えて、実証期間中に発生した令和6年能登半島地震の影響下でも、医療と通信の両インフラが一定レベルで機能を維持したことは、災害時の代替医療インフラとしての有効性を示す結果となりました。
👉【外部リンク】
日経メディカル:七尾市実証事業の詳細レポート
◆ 山口県周南市:制度活用による本格導入の第一歩
▽ 取扱郵便局と開始日
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場所:高瀬郵便局(〒746-0103 山口県周南市垰186)
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開始日:2024年7月16日(火)〜
この取り組みでは、周南市から日本郵便株式会社が**「オンライン診療等支援事務」を正式に受託**し、郵便局を公共的な診療拠点として活用する体制が組まれています。
▽ 取り扱い内容の詳細
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毎週火曜に、郵便局内の応接室でオンライン診療・服薬指導を実施
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毎月第3火曜は、巡回診療の代替拠点として医師が郵便局に訪問
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郵便局員が診療前後のサポートを行い、患者が安心して利用できる環境を構築
この事業は、厚生労働省が2024年1月に示した「医師が常駐しないオンライン診療所開設に関する制度見直し」に基づき、制度上の整備を活かして運用される先進事例です。
👉【外部リンク】
厚生労働省:オンライン診療に関する特例的制度について(2024年1月16日通知)
◆ 成果と今後の課題
▽ 成果として評価された点
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患者の通院負担が大幅に軽減
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地域医療機関との連携体制が可視化
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郵便局職員の介在により、オンライン診療のハードルが下がった
▽ 今後の課題
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通信インフラの整備(ブース内の回線速度・セキュリティ強化)
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医師・薬剤師の遠隔対応による業務負荷の調整
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継続的な制度整備と補助金の安定確保
特に、オンライン診療の対象疾患が限られている点や、緊急性を要する診療には対応できない現実もあるため、オンラインと対面診療をどう共存・連携させるかが大きなテーマになります。
◆ 郵便局型オンライン診療は今後全国へ広がるか?
郵便局という全国共通インフラを用いたこの診療モデルは、今後の日本の地域医療のあり方にとって非常に重要な試金石です。実証段階から本格運用へと進む中、以下のような展開が期待されます。
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離島や中山間地域への水平展開
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自治体と医師会の包括連携モデルの構築
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災害時の代替医療拠点としての制度化
実証を通じて得られた知見が蓄積されれば、「郵便局=医療の地域拠点」という構図が定着する未来も現実味を帯びてきます。民間と行政、そして医療現場が三位一体となった地域医療のアップデート。その起点となるのが、まさに今進んでいるこの郵便局型オンライン診療なのです。
郵便局が担う「診療ブース」としての役割とは?
オンライン診療が地域医療の新たな選択肢となる中で、そのインフラとして脚光を浴びているのが郵便局の「診療ブース」化です。診療所の代替として、また患者と医師をつなぐ場として、郵便局が果たす役割は医療の“ハブ”といえるほど多機能になりつつあります。
この章では、郵便局の診療ブースに求められる機能や運用実態、医療との接点で発揮される地域貢献の在り方について詳しく解説します。
◆ 診療ブースとは?オンライン診療の「場」を提供する設備
診療ブースとは、患者が医師のオンライン診療を受けるための専用スペースを指します。診療ブースに求められるのは、単なる空間の提供ではなく、以下のような医療現場と同等の環境構築です。
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通信環境の整備(Wi-Fi、有線回線、タブレット端末など)
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プライバシー確保(遮音・遮蔽、外部からの目隠し)
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医師や薬剤師とのビデオ通話機器の操作サポート
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必要に応じた体温計や血圧計などの設置
つまり、診療ブースは「診療を受ける空間」であるだけでなく、**患者が安心して医療にアクセスできる“準医療空間”**としての役割が求められているのです。
◆ 郵便局が提供する「診療ブース」のメリットとは?
なぜ、郵便局がこの「診療ブース」として選ばれているのでしょうか? その背景には、郵便局ならではの地域性と信頼性があります。
1.全国共通のインフラとしての信頼
郵便局は、都市部から山間部・離島に至るまで、日本全国に約24,000局(※1)存在しています。民間施設と異なり、国民にとって親しみと安心感がある公共インフラであるため、高齢者でも抵抗なく訪問できるという大きな強みがあります。
2.「地域住民との接点」がすでにある
特に地方では、郵便局は住民との日常的な接点を持つ数少ない拠点です。窓口業務や集配業務を通じて高齢者や独居世帯の状況を把握しているため、医療的支援が必要な人へのアプローチが可能です。
3.局員による端末操作の補助
オンライン診療を受ける際、タブレットやスマートフォンの操作が必要ですが、高齢者などにとっては大きなハードルです。郵便局では職員が端末設定や接続サポートを行う体制が構築されており、「難しそうだから諦める」といった利用断念を防ぐことができます。
◆ 具体例:山口県周南市・高瀬郵便局の応接室が診療ブースに
2024年7月から本格導入が始まる山口県周南市の「高瀬郵便局」では、応接室が診療ブースとして活用されます。日本郵便が正式に市から業務を受託し、毎週火曜日にはオンライン診療、毎月第3火曜日には巡回診療の拠点として運用される予定です。
この診療ブースでは、以下のようなサポート体制が構築されます。
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オンライン診療用タブレット端末の常設
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Wi-Fiまたは有線による安定した通信環境
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患者の診療前の案内・操作支援(郵便局員対応)
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診療後の処方情報を薬局に連携し、薬を郵送で届ける体制
このような仕組みによって、患者は自宅から数分で通える郵便局で診療を完結できる環境が整いつつあるのです。
👉【外部リンク】
日本郵便:オンライン診療支援に関する発表
◆ ブース設置にかかる費用は補助金で対応可能
オンライン診療ブースの設置には、通信機器や間仕切り、家具・照明の導入など、ある程度の初期投資が必要です。しかし、これらの経費については「へき地医療拠点病院運営事業」の補助金を活用することができます(※2)。
対象経費の例:
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タブレット・カメラ・マイクなどの機器購入費
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ブース設置工事費(仕切り、机、椅子、照明等)
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通信回線の導入・維持費用
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利用マニュアル作成・研修費用
この補助制度の活用により、自治体・医療機関・郵便局が共同で診療ブースを整備する体制を作りやすくなっています。
👉【外部リンク】
厚労省「へき地医療拠点病院運営事業に関する通知」
◆ 今後の標準モデルとしての展望
診療ブースという形態は、今後以下のような広がりが期待されています。
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自治体が主導し、複数の郵便局にブースを設置
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薬局・医療機関との連携により診療から服薬まで一貫提供
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地域包括ケアの一環としての位置づけ
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災害時・感染症流行時の代替医療インフラとして活用
一部の医療関係者からは、「郵便局は高齢者の“セーフティーネット”として、医療・福祉の橋渡し役を果たすポテンシャルがある」との期待の声もあがっています。
補助金制度や制度面の整備状況をチェック|郵便局オンライン診療の下支えとなる仕組み
オンライン診療を郵便局で行うという新たな地域医療モデルが注目を集めていますが、その背景には**法的な制度整備と財政的支援(補助金制度)**がしっかりと存在しています。医療機関や自治体、そして郵便局が連携して成り立つこの取り組みには、運営上のハードルも多いですが、制度面の進化と支援金の活用がそれらを下支えしているのです。
この章では、郵便局でのオンライン診療を可能にする法律的根拠と補助金の仕組みについて、具体的に紹介していきます。
◆ 制度の変化①:医師が常駐しない診療所の開設が可能に
従来の医療法では、「診療所」には基本的に医師の常駐が求められていました。しかし、医療資源が乏しいへき地や高齢化が進んだ地域では、常駐医師の確保が極めて困難という課題がありました。
これに対応するため、厚生労働省は2023年5月に方針を変更し、「へき地などにおいては、医師が常駐しない診療所でもオンライン診療を目的とする開設を可能にする」との通知を発出しました。
さらに、2024年1月にはその適用範囲が拡大され、へき地以外の地域でも条件を満たせば常駐なし診療所が開設可能となっています。
▽ 関連通知:
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【令和5年5月】「医療資源が限られた地域での診療所開設について」
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【令和6年1月16日】「医師が常駐しないオンライン診療所開設の特例措置(医政総発0116第2号)」
👉 厚生労働省 オンライン診療関連通知一覧
これにより、郵便局などの非医療施設が“診療所”として機能する法的根拠が整えられたわけです。
◆ 制度の変化②:オンライン診療のガイドラインと手引書の整備
オンライン診療に関しては、厚生労働省が定めた**「オンライン診療の適切な実施に関する指針」と、現場での運用を想定した「利用手順の手引き書」**が存在します。これらは医療機関だけでなく、郵便局・自治体などの関係者にとっても重要な指針となっています。
▽ ガイドラインの主なポイント
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初診の対応条件(対面診療歴が必要かどうか)
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個人情報・通信セキュリティの確保
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医師・患者双方の同意
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処方箋の発行と薬剤の配送手続き
これらの整備により、診療ブースでの医療行為が「正式に認められた手段」であることが明文化され、郵便局などの施設もガイドラインに沿った運営が可能になります。
◆ 補助金制度:へき地医療拠点病院運営事業の活用
制度面の整備と並行して、郵便局型診療の導入には費用面の支援が不可欠です。そこで活用されているのが、厚生労働省が管轄する**「へき地医療拠点病院運営事業」に基づく補助金制度**です。
▽ 補助金の対象範囲
この補助金では、以下のような費用が対象となっています。
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ブース設置に必要な備品費(タブレット、カメラ、遮音設備)
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通信環境の整備費(Wi-Fiルーター、プロバイダー契約など)
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診療ブースの工事・改修費用(仕切り、個室化など)
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郵便局員や医療関係者の研修費用
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運用管理に係る委託費(民間事業者への業務外注など)
実際に高瀬郵便局(山口県周南市)での診療ブース設置には、これらの補助制度が積極的に活用されています。
▽ 補助金の交付主体と流れ
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国が予算を計上し、都道府県が実施主体となる
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各自治体が医療機関・郵便局と連携して事業を申請
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実績報告と成果検証を経て、翌年度以降の予算にも反映
◆ 制度面の今後の方向性:法律上の明確化へ
これまでの郵便局型オンライン診療は、「既存法令の柔軟な運用」によって実施されてきましたが、今後はその法制上の位置づけを明確化する動きが本格化しています。
厚生労働省の方向性(2025年以降見込み):
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「オンライン診療を行う医療機関」と「特定オンライン診療受診施設」の法的定義を新設
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都道府県への届出制・定期監査の導入
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医師の責任・患者保護の枠組みをより明確化
これにより、郵便局や公民館などが地域医療の一端を担う施設として、正式な医療インフラに位置付けられる可能性が出てきました。制度の法制化により、診療の信頼性や継続性がさらに高まることが期待されます。
今後の展望と課題|郵便局型オンライン診療の可能性とは?
郵便局を拠点にしたオンライン診療は、「医療アクセスの地域格差」という長年の課題に対して、新しいソリューションを提示する革新的な取り組みです。すでに石川県七尾市や山口県周南市といった地方都市でモデル事業が始まり、国の制度支援と補助金制度も整いつつある今、この仕組みは本格的な全国展開を見据えた重要な転換期に差し掛かっています。
この章では、郵便局型オンライン診療が抱える将来的な可能性と課題を整理しながら、持続可能な地域医療モデルとしての展望を考察します。
◆ 今後期待される広がり|全国24,000局が地域医療の窓口に?
現在、郵便局は全国に約24,000局(日本郵便調べ)存在し、その多くは地方や山間部、離島などにも点在しています。これは、医療機関では実現が難しい“全国均一のアクセス網”を持つという意味で、きわめて強力な医療インフラ候補です。
▽ 今後の拡大に向けた展望
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複数の自治体で同時に実装される「広域モデル」
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災害・感染症拡大時の緊急代替医療拠点
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地域包括ケアとの連携(介護・福祉・看護との接続)
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薬局と連動した服薬指導・配送システムの標準化
これにより、郵便局は単なる「診療を受ける場」から、**処方・指導・健康相談を包括する“生活密着型ヘルスステーション”**へと進化していく可能性があります。
◆ 可能性①:地域包括ケアとオンライン医療の融合
高齢化の進む地方では、「医療・看護・介護・生活支援」が一体化した地域包括ケアシステムの構築が重要なテーマになっています。郵便局型のオンライン診療は、まさにこの**地域医療と福祉をつなぐ“接点”**になりうる存在です。
具体的な連携シナリオ
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ケアマネジャーと連携して患者の服薬管理や健康チェックを共有
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自治体の保健師と郵便局職員が連携し、受診勧奨や体調確認を実施
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訪問介護や地域の見守り活動と連動して、医療への橋渡しを担う
このように、オンライン診療は単体ではなく、「地域の多職種連携を活かすプラットフォーム」として活用されてこそ、その真価を発揮します。
◆ 可能性②:災害時・パンデミック時の代替医療拠点に
2024年1月の能登半島地震において、実際にオンライン診療が被災地域で活用されました。患者が避難所などに移動した後も、かかりつけ医との接続がオンラインで確保されたことは、オンライン診療の災害対応力を証明する事例となりました。
郵便局は、通信インフラが整っており、地域のハブとして機能する建物であるため、以下の用途で活用が期待されます。
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避難所での簡易診療拠点
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感染症流行時の“非接触診療ブース”
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緊急時の医薬品受け取り拠点(調剤薬局との連携)
特にパンデミックや自然災害が頻発する今の日本において、「郵便局が地域医療の非常時対応の起点になる」という発想は、今後の制度設計でも鍵を握るテーマです。
◆ 現時点での課題と改善の方向性
急速に導入が進む一方で、郵便局型オンライン診療にはいくつかの課題も明らかになっています。制度・運用・人材の観点から、今後解決が必要なポイントを整理します。
▽ 制度面の課題
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「特定オンライン診療施設」としての法的定義が不明確(※現在整備中)
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都道府県による判断の差があり、全国的な平等性が不十分
▽ 運用面の課題
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通信障害やセキュリティ対策への懸念(個人情報保護の徹底)
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郵便局員の対応範囲や業務負担の明確化
▽ 人材面の課題
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医師・薬剤師のリモート業務負担
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郵便局員への研修制度の不足
このような課題に対しては、国による制度の一元化、自治体による地域実情に応じた運用マニュアルの策定、関係者の定期的な情報共有の場の確保が有効と考えられます。
👉参考:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
◆ まとめ:郵便局から始まる“地域密着型医療”の新時代
郵便局を活用したオンライン診療は、単なる「医療の効率化」ではなく、“人の暮らしに寄り添う医療”を再構築する取り組みです。高齢化・人口減少・災害多発といった社会課題に対して、郵便局という信頼のインフラを最大限に活かしながら、新しい形の地域医療を模索する流れは加速しています。
現時点では一部地域のモデルケースに過ぎませんが、制度的裏付けと財政的支援が進めば、郵便局が地域医療の“入口”として定着する日も遠くないでしょう。
行政、医師会、郵便局、そして地域住民の声が一体となることで、日本の医療の“ラストワンマイル”は、確実に届くようになるはずです。